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スキナーのオペラント条件づけとは|強化と罰の仕組み

更新: 長谷川 理沙
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スキナーのオペラント条件づけとは|強化と罰の仕組み

オペラント条件づけは、B.F.スキナーが1930年代に体系化した学習理論で、自発的な行動がその後の報酬や罰によって増えたり減ったりするしくみを指します。1937年にスキナーが造語した「オペラント」は、環境に働きかける行動を意味し、反射を扱う古典的条件づけとは時間の向きが逆です。

オペラント条件づけは、B.F.スキナーが1930年代に体系化した学習理論で、自発的な行動がその後の報酬や罰によって増えたり減ったりするしくみを指します。
1937年にスキナーが造語した「オペラント」は、環境に働きかける行動を意味し、反射を扱う古典的条件づけとは時間の向きが逆です。
学習心理学を学び始めた頃に「負の強化」を「罰」と取り違えて混乱した経験があると、この違いを最初に押さえることの大切さがよくわかります。
この記事では、正と負、強化と罰を2つの軸で整理し、日常例からでも自分で分類できるようにしていきます。

オペラント条件づけとは|スキナーが確立した学習理論

オペラント条件づけは、自発的に放出された行動が、その後に続く結果によって起こりやすさを変える学習である。
刺激が先に反応を引き出す古典的条件づけとは違い、ここでは「行動→結果」の順序が学習の中心になる。
スキナーが1937年に造語した「operant」は、operate、つまり環境に働きかける能動性を含む語であり、この名前自体が理論の骨格をよく表している。

オペラント条件づけの定義と『operant』の語源

オペラント条件づけは、行動そのものを出発点にして、その結果が次の行動頻度を左右する学習理論である。
反応が刺激に押し出されるのではなく、まず自発的な行動が出て、その行動が報酬や罰と結びつくことで、やがて同じ行動が増えたり減ったりする。
この順序を押さえるだけで、強化や罰の議論がぐっと理解しやすくなる。

「オペラント」は1937年にスキナーが造語した語で、語源は operate だ。
環境に働きかけ、そこから結果を引き出すという意味合いが込められているため、受け身の反応ではなく、行動する側の能動性が前面に出る。
研究助手として論文を読み始めた頃、筆者もこの含意を知った瞬間に理論全体が腑に落ちた記憶がある。
学生に「なぜオペラントと呼ぶのですか」と問われた場面でも、語源から説明すると一気に納得が生まれた。

理論を初めて体系的にまとめた著作は、1938年の『The Behavior of Organisms(生体の行動)』である。
年代まで含めて押さえると、スキナーが単なる用語の提案者ではなく、学習を行動分析として組み立て直した人物だと見えてくる。
ここが出発点です。

自発的な行動と『結果』が学習を変える仕組み

オペラント条件づけの要点は、自発的に emit された行動が、後続の結果によって増減するところにある。
たとえば、ある行動のあとに望ましい結果が続けば、その行動は生起しやすくなり、逆に不快な結果が続けば減っていく。
つまり学習とは、行動の内側にある意図だけで決まるのではなく、行動の外側で何が起きたかによって形づくられるのである。

この考え方が実践で役立つのは、行動を「性格」や「やる気」だけで片づけず、結果の設計として見直せるからだ。
たとえば子どもの片づけ、ペットのしつけ、学習習慣の定着まで、どれも「何をしたら何が起きるか」を整えるほど変化を起こしやすい。
筆者が学生に説明するときも、まずは「行動の直後にどんな結果が置かれるか」を一緒に確認してみてください、と促すことが多い。

ただし、この理論の理解で大切なのは、結果を単純なご褒美として扱わないことだ。
結果には行動を増やす強化と、減らす罰があり、さらに「何を与えるか」だけでなく「何を取り除くか」でも働きが変わる。
ここを押さえると、古典的条件づけとの違いが明確になる。

この記事で扱う4つの軸

この記事では、オペラント条件づけを四つの軸で順に整理する。
最初に強化と罰の4分類を見て、次に強化スケジュールで結果の与え方がどう変わるかを押さえる。
そのうえで、三項随伴性とシェイピングを使って行動がどう形成されるのかを確認し、最後に古典的条件づけとの違いと応用へ進む構成だ。
道筋が見えていれば、用語の断片がばらばらに見えなくなる。

ねらい注目点
強化と罰の4分類行動を増減させる基本原理を理解する正・負と強化・罰の組み合わせ
強化スケジュール結果をいつ与えるかを整理する連続強化と4タイプの間欠強化
三項随伴性とシェイピング行動が形成される過程をつかむ弁別刺激→反応→結果
古典的条件づけとの違いと応用学習理論の位置づけを確認する反応中心か、行動結果中心か

この順番で読むと、理論の核から応用までが一本の線でつながる。
強化スケジュールの違いは消去抵抗の理解にもつながり、三項随伴性は行動分析の基本形として後の応用行動分析(ABA)へ接続する。
まずはこの全体図を持って、次の節へ進みましょう。

心理学者B.F.スキナーとは|生涯と主要な著作

B.F.スキナーは1904年3月20日に米ペンシルベニア州サスケハナで生まれ、1990年8月18日にマサチューセッツ州ケンブリッジで生涯を閉じた。
英文学で作家を志したのち、心理学へ転じて1931年にハーバード大学で博士号を取得し、1958年から1974年まで同大学のエドガー・ピアース記念心理学教授を務めた経歴が、理論家としての重みを支えている。
米国心理学会(APA)が『20世紀で最も影響力のある心理学者』第1位に挙げたのも、行動を観察可能な結果から読み解く視点を、実験室の外へ広げたからである。

作家志望から心理学者への転身とハーバード時代

ハミルトン大学で英文学を学んだスキナーは、言葉で世界を描く側に立とうとしたが、その回り道のような経験が、のちの理論書の明快さにつながった。
伝記的資料を読むと、文章の鋭さだけでなく、概念を順序立てて組み立てる力に驚かされる。
作家志望だった青年が、心理学を通じて人間行動の法則を記述する側へ移ったこと自体が、彼の理論の出発点をよく示しているのではないだろうか。

ハーバード大学で1931年に博士号を取得してからは、実験心理学の語法をさらに研ぎ澄ませた。
講義準備で著作年表を並べると、個人の学習実験から社会構想へと射程が伸びても、問題設定は一貫しているとわかる。
1930年代に理論を体系化し、後年の教育や社会設計にも接続した流れは、単なる研究者ではなく、行動の条件を設計する思想家だったことを物語る。

スキナー箱(オペラント条件づけ箱)の発明

スキナー箱は、オペラント条件づけを可視化するための装置として知られ、動物の自発的な反応と、その後に与えられる結果の関係を精密に扱えるようにした。
刺激に反応が受動的に引き出される古典的条件づけと異なり、行動が環境に働きかけ、その結果によって次の行動が増えるか減るかを見る点が核心である。
1937年にスキナーが「オペラント」という語を造語したことも、この違いを明確にするためだった。

この装置が重要なのは、学習を「気分」や「性格」の曖昧な話にせず、結果の操作として扱えるからである。
正の強化、負の強化、正の罰、負の罰という4分類も、箱の中で観察できる現象を土台に整理された。
とくに負の強化は罰と混同されやすいが、嫌悪刺激が取り除かれることで行動が増える点が本質だ。
ここを押さえると、行動分析の骨組みがぐっと見えやすくなる。

『ウォールデン・ツー』『言語行動』など主要著作の流れ

主要著作を年代順に追うと、スキナーが実験だけでなく社会や言語へ理論を広げた軌跡がはっきりする。
1948年の『ウォールデン・ツー』では、行動科学の発想を社会制度の設計へ持ち込み、1957年の『言語行動(Verbal Behavior)』では、ことばそのものを行動として捉え直した。
著作年表を作ると、この射程の広さに驚く。
箱の中の反応から共同体のあり方まで、視線が途切れていないからだ。

理論面では、1938年に刊行された著作がオペラント条件づけを体系的に示した起点となる。
その後も、弁別刺激→反応→結果の三項随伴性、シェイピング、強化スケジュールといった概念が積み上がり、応用行動分析(ABA)やトークンエコノミー、ティーチングマシンへと展開した。
1958年から1974年までのハーバードでの重責とAPAの評価は、こうした研究の厚みが学界全体に届いていたことを示している。

強化と罰の4分類|正・負×強化・罰を整理する

『正・負』と『強化・罰』の2軸で4象限を読む

強化と罰は、まず「正か負か」と「行動が増えるか減るか」を切り分けると整理しやすいです。
正は刺激を与えること、負は刺激を取り除くことを指し、強化は行動を増やし、罰は行動を減らします。
この2軸を掛け合わせると、日常の行動変化は4象限で読み解けるようになります。

筆者自身、学び始めのころに「負の強化=罰」と取り違えて演習で外したことがあります。
ここでの混乱は珍しくなく、似た言葉が並ぶほど意味が逆向きに見えやすいのです。
だからこそ、まず定義を固定してから例を重ねる流れが有効になります。

強化行動後に好子を与えて行動を増やす行動後に嫌子を取り除いて行動を増やす
行動後に嫌子を与えて行動を減らす行動後に好子を取り除いて行動を減らす

4分類の日常例

正の強化は、宿題をしたらお小遣いがもらえるように、行動のあとで好ましい刺激を加えてその行動を増やす形です。
負の強化は、宿題をしたら小言が止むように、行動のあとで嫌な刺激を取り除いて同じく行動を増やします。
ここで押さえたいのは、負の強化は罰ではなく、行動を増やす仕組みだという点でしょう。

正の罰は、違反で罰金を科すように、嫌子を与えて行動を減らします。
負の罰は、ルール違反でゲーム禁止にするように、好子を取り除いて行動を減らします。
罰は「増やす」方向ではなく、あくまで減らす方向に働くので、強化と混同しないことが整理の近道です。
身近な例として、目覚ましを止めるために起きる、という説明を後輩に出したときは、負の強化が一気に伝わりました。

分類刺激の変化行動への効果日常例
正の強化好子を与える増える宿題でお小遣い
負の強化嫌子を取り除く増える宿題で小言が止む
正の罰嫌子を与える減る違反で罰金
負の罰好子を取り除く減るルール違反でゲーム禁止

好子・嫌子と一次性/二次性強化子の違い

好子は行動を増やしやすい刺激、嫌子は行動を減らしやすい刺激です。
ただし、何が好子になるかは文脈だけでなく、刺激そのものの性質でも分けて考える必要があります。
食物や水のように生得的に価値を持つものは一次性強化子で、お金やトークンのように学習によって価値を得たものは二次性強化子です。

この区別が役立つのは、後半で扱うトークンエコノミーにつながるからです。
一次性強化子はその場で効きやすく、二次性強化子はルールづけや交換の仕組みと結びつけることで力を発揮します。
つまり、何を与えるかだけでなく、どう価値づけるかまで含めて設計すると、強化の理解はぐっと実用的になるのです。
おすすめです。

強化スケジュール|4つのパターンと消去抵抗の違い

強化スケジュールは、行動がどのくらい速く学習され、どのくらい消えにくくなるかを左右する仕組みです。
毎回ほめる連続強化(CRF)は習得を早めますが、強化が止まると行動も早く弱まります。
逆に、強化の出方が読みにくい間欠強化は反応を保ちやすく、なかでも変動比率(VR)は消去抵抗が最も強いことで知られます。

連続強化と間欠強化の基本

連続強化(CRF)は、正しい反応が出るたびに強化を与えるやり方です。
学習初期にはとても効率がよく、何をすれば報酬が来るのかが一目で分かるため、行動の形成が速く進みます。
ただし、そのぶん「もう強化は来ない」と判断されると行動が速やかにしぼみやすい。
たまにしかほめない方が定着する場面を学習指導で見かけるのは、この間欠強化の性質が働いているからです。

筆者自身、スマホ通知をつい開いてしまう行動を振り返ると、まさに間欠強化の説明で腑に落ちました。
開けば必ず何かあるわけではないのに、たまに新着が来るからこそ確認がやめにくいのです。
SNSや通知欄は、すぐに成果が見えるCRFではなく、次が読めない強化の並びになっていると考えると納得しやすいでしょう。

比率×間隔・固定×変動の4スケジュール早見

間欠強化は、まず反応数で区切るか時間で区切るかで「比率」と「間隔」に分かれ、さらにタイミングが決まっているか予測できないかで「固定」と「変動」に分かれます。
これを組み合わせると、固定比率(FR)・変動比率(VR)・固定間隔(FI)・変動間隔(VI)の4タイプになります。
整理すると、何をきっかけに強化が来るのか、行動の続き方がどう変わるのかが見えやすくなります。

スケジュール強化の決まり方行動の傾向典型的な特徴
FR反応数が一定に達したら強化強化直前に反応が増えやすい強化後反応休止が起きやすい
VR反応数は変動し、平均的に強化反応が安定して続きやすい次が読めず、粘りが出やすい
FI一定時間がたつと強化時間が近づくと反応が増える強化後反応休止が起きやすい
VI時間が変動して強化反応がなめらかに続きやすい予測しづらく、間が空きにくい

固定スケジュールでは、強化直後にいったん反応が止まる強化後反応休止が目立ちます。
次がいつ来るか分かっているので、いま急いで反応する必要が薄れるからです。
これに対して変動スケジュールは予測が外れるため、待ち伏せよりも継続が得になります。
FRとFIは規則が見えやすく、VRとVIは見えにくい。
ここが行動のリズムを分ける要点です。

消去抵抗が最も強い変動比率とギャンブルの心理

消去抵抗は、強化が止まっても行動がどれだけ残るかを示します。
連続強化より間欠強化のほうが消去抵抗は大きく、とくに変動比率(VR)が最強です。
反応しても報酬が来ないことが何度か続いても、次の一回で当たるかもしれないという期待が消えにくいためです。
固定の仕組みより変動の仕組みがしぶといのは、予測可能性の低さが見切りを遅らせるからでしょう。

この性質は、スロットマシンがやめにくい理由そのものです。
毎回は当たらないのに、たまに大きく返ってくるため、反応を続ける価値があるように感じられる。
SNSの通知も同じで、何もない時間があっても、次の確認で何か見つかる体験が行動を支えます。
間欠強化の中でもVRが最も強いのは、報酬そのものより「まだ出るかもしれない」という期待を長く保たせるからです。

三項随伴性とシェイピング|行動を形づくる原理

三項随伴性は、行動を弁別刺激、反応、結果の連鎖として見る考え方で、行動分析学ではABC分析とも呼ばれます。
スキナー箱の解説図でAからB、BからCへとつながる流れを初めて見たとき、行動が「その場の状況」と切り離された性格ではなく、条件づけの中で形を変えるものだと腑に落ちます。
ここを押さえると、習慣づくりも問題行動の理解も、かなり整理しやすくなります。

弁別刺激・反応・結果の三項随伴性

三項随伴性は、Aの弁別刺激、Bの反応、Cの結果が一続きで働く見方です。
たとえばブザーが鳴るとレバーを押し、餌が出るという流れでは、ブザーが「この状況なら押せば強化される」という合図になります。
同じレバー押しでも、合図がなければ結果が変わるため、行動はいつも単独ではなく、前後の文脈込みで理解する必要があるのです。
ABC分析が役立つのは、失敗や成功を本人の性格に回収せず、何がきっかけで、何が続き、何が結果として残ったのかを切り分けられるからでしょう。

行動分析学の説明図を追っていると、世界が急に整理された感覚があります。
行動そのものを眺めるより、先行条件と結果のつながりを見るほうが、同じ行動が続く理由まで見えやすいからです。
弁別刺激は単なるサインではなく、「ここでは強化される」という期待を学習させる装置だと考えると、環境を変える意味もはっきりしてきます。

シェイピング(漸次接近法)で新しい行動を作る

シェイピング(漸次接近法)は、目標行動をいきなり完成形で求めず、スモールステップに分けて段階ごとに強化していく技法です。
新しい複雑な行動は一度に身につかないので、最初は方向性だけを捉え、次に近い形、その次にもっと近い形へと強化の基準を少しずつ上げていきます。
できた部分をその都度強化するため、本人も「何をすれば前に進むのか」をつかみやすく、行動の再現性が高まります。

運動習慣を作るとき、筆者自身は「5分だけ着替える」ことから始めました。
いきなり30分の運動を目指すより、まず着替えられたら成功、次に靴を履けたら成功、さらに家の外に出られたら成功と、到達点を細かく刻むほうが続きやすかったのです。
シェイピングの利点は、意志の強さに頼り切らず、できた事実を積み上げていけることにあります。

消去と消去バースト

消去は、これまで強化されていた行動に対して強化が与えられなくなり、その行動が次第に減っていくことです。
ただし、減る前に一時的に反応が激しくなる消去バーストが起こることがあります。
いつも通っていたやり方で結果が返ってこないと、行動はむしろ増えたり、強くなったりしやすいのです。
しつけや習慣変容で途中の手応えが薄れたとき、ここで「効かない」と判断してやめると、まさに反応が落ち着く手前で終わってしまいます。

この現象を知っているだけで、観察の目が変わります。
強化を止めた直後に行動が増えたとしても、それは失敗ではなく、消去が進む途中の反応として読めるからです。
大切なのは、行動が減るプロセスには揺れがあると理解し、どの刺激が何を維持しているのかを見失わないことです。
こうした視点があると、ABC分析とシェイピングが、行動を形づくるための実践的な道具としてつながって見えてきます。

古典的条件づけとの違い|パブロフとの対比

古典的条件づけは、刺激が反応を引き出す学習です。
パブロフが示したのは、ベルと餌を繰り返し対提示すると、やがてベルだけで唾液が出るようになり、反応が外から与えられた刺激によって受動的に立ち上がるという事実でした。
ここで中心にあるのは、行動を自分で起こすかどうかではなく、特定の刺激がどのような反応を呼び起こすかという対応関係です。
だからこそ、古典的条件づけはオペラント条件づけと混同されやすくても、学習の骨格はまったく別物だと押さえておく必要があります。

古典的条件づけ(パブロフ)の仕組み

古典的(レスポンデント)条件づけは、ベルのような中性刺激が餌と結びつくことで、やがてベル単独でも唾液反応を生むようになる学習です。
重要なのは、刺激が先にあり、その刺激に反応が引き出される点にあります。
唾液や情動のような不随意の生理反応が中心なので、反応そのものを「選ぶ」感覚は弱く、むしろ身体が条件づけられていくイメージに近いでしょう。
授業で学生に「よだれは古典的」と伝えると、ここで混乱がほどけることが少なくありません。

『刺激→反応』と『行動→結果』の向きの違い

両者の決定的な違いは向きです。
古典的条件づけは「刺激→反応」で、反応は受動的・反射的に現れますが、オペラント条件づけは「行動→結果」で、行動は自発的・能動的に選ばれます。
たとえばレバー押しや勉強は、外から刺激が来たから勝手に起こるのではなく、行動のあとに報酬や結果が返ってくることで増減していきます。
学生に「レバー押しはオペラント」と覚えてもらうと、古典的条件づけとの境目がかなり明瞭になります。
こちらは古典的条件づけのような反射ではなく、結果が行動の起こりやすさを変える学習だからです。

観点 古典的条件づけ オペラント条件づけ
基本の向き 刺激→反応 行動→結果
中心となる反応 唾液、情動などの不随意反応 レバー押し、勉強などの自発行動
学習の要点 刺激が反応を引き出す 結果が行動の生起頻度を変える

ソーンダイクの効果の法則という源流

オペラント条件づけの理論的源流としては、ソーンダイクの『効果の法則』が欠かせません。
満足を伴う反応は刺激との結びつきが強まる、という発想は、問題箱の試行錯誤学習を観察したところから生まれました。
ここで見えているのは、正しい行動を一度に理解するのではなく、試して、失敗して、うまくいった行動が残るという学習の流れです。
ソーンダイクの論文を読んだとき、スキナー箱の原型はすでにここにあるのだと気づき、系譜が一本につながった感覚がありました。
スキナーはこの考え方を精密化し、行動と結果の関係をより厳密に扱える理論へと発展させました。

オペラント条件づけの応用|教育・療育・しつけへ

オペラント条件づけは、行動の直後に起こる結果で、その行動が増えるか減るかを見ていく学習理論です。
教育や療育、しつけの現場では、この考え方をそのまま当てはめるのではなく、行動を増やしたい場面では正の強化を軸にし、望ましくない反応を減らす設計へと組み替えて使います。
ここが実践の肝で、理屈よりも「何が行動のあとに起きるか」を整えるだけで、現場の流れは大きく変わります。

応用行動分析(ABA)とトークンエコノミー

応用行動分析(ABA)は、三項随伴性に基づいて行動を支援する技法体系で、自閉症の療育などで適応行動の形成に使われてきました。
きっかけとなる刺激、行動、結果を切り分けて見るので、困った行動を本人の性格に回収せず、どこを調整すれば変化が起きるかを具体的に考えやすいのです。
実際、職場研修でもできた行動をその場で具体的に承認すると、反応の定着が早くなる感覚がありました。
抽象的なほめ言葉より、何ができたのかを即座に言語化する方が、次の行動につながりやすいからでしょう。

トークンエコノミーは、そのABAの考え方を分かりやすく形にした方法です。
代用貨幣としてのトークンを強化子として与え、あとでほしい物や活動と交換させる仕組みで、トークン自体はすぐ食べたり使ったりできなくても、交換可能という約束が行動を支えます。
二次性強化子の代表例として理解すると、一次性強化子との違いも整理しやすく、強化の設計が「その場のご褒美」だけではないと見えてきます。
子どもの学習記録や教室運営でも、行動の積み上げを見える化する道具として使いやすいです。

プログラム学習とティーチングマシン

プログラム学習は、教材を小刻みに提示し、学習者の積極的反応を引き出し、即時に正誤を確認し、自己ペースで進めるという4原理で成り立っています。
スキナーはこの発想を実際にティーチングマシンとして実装し、現代のeラーニングの先駆けを示しました。
教材分析の作業をしていると、いまのオンライン学習アプリにある分割表示、即時フィードバック、進度管理が、そのままこの原理の延長にあると気づきます。
学習者が迷う前に次の一歩を示す設計は、理解の負担を減らし、達成感を細かく積み上げるのでおすすめです。

この仕組みは、単に機械的に問題を出すためのものではありません。
反応がすぐ返ってくることで、正しい操作と結果の結びつきが強まり、誤答もその場で修正できるからです。
学習者が自分のペースで進める点も見逃せません。
集団授業では置いていかれやすい人でも、区切られた課題なら進めやすくなり、練習量を確保しやすくなります。
教育の現場でこの考え方を取り入れるなら、説明を長くするより、短いステップを連続させる方が成果につながりやすいでしょう。

子育て・しつけで使うときの注意点

子育てやペットのしつけに応用するときは、罰を中心に据えないことが実践上の原則です。
罰は行動を止めるように見えても、反発や回避を生みやすく、関係悪化につながることがあります。
だからこそ、望ましい行動を正の強化で増やす方を主軸にしましょう。
たとえば、静かに待てた瞬間をすぐ認める、できた手順を細かくほめる、成功しやすい状況を先に整える、といったやり方です。
日常で使うなら、この順序を意識してみてください。

ℹ️ Note

重要なのは、行動の直後に何を返すかです。叱る前に、増やしたい行動が起きやすい場面を作る。これだけでも手応えは変わります。

しつけは力で押さえるより、成功体験を積ませる方が安定します。
子どもにもペットにも、できた瞬間の強化が最も分かりやすい合図になるからです。
完璧を求めず、小さな改善を拾っていく姿勢が、結果としていちばん再現性の高い方法になります。
おすすめです。

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長谷川 理沙

心理学系大学院修了。認知心理学・社会心理学を専門とし、年間100本以上の論文に目を通しながら最新の研究動向を分かりやすく解説します。

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