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承認欲求が強い人|心理学で考える対処

更新: 小野寺 美咲
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承認欲求が強い人|心理学で考える対処

承認欲求とは、マズローの欲求段階説で下から4番目に位置する尊重欲求であり、他者から認められたい気持ちと自分を価値ある存在として確かめたい気持ちの両方を含む自然な欲求です。

承認欲求とは、マズローの欲求段階説で下から4番目に位置する尊重欲求であり、他者から認められたい気持ちと自分を価値ある存在として確かめたい気持ちの両方を含む自然な欲求です。
小島弥生らが2003年に整理した賞賛獲得欲求と拒否回避欲求の2タイプに分けて見ると、同じ「承認欲求が強い」でも現れ方がまったく違うとわかります。
人事・組織開発の現場では、SNSの「いいね」が伸びずに落ち込む若手や、会議で意見を飲み込む人を何度も見てきましたが、承認欲求は性格ではなく整え方の問題として捉えるほうが実践的です。
この記事では、自己承認を育てる方向と、課題の分離や認知の見直しで手放す方向の両輪に加え、身近に承認欲求が強い人がいる場合の接し方まで、読後すぐに使える形で見ていきます。

承認欲求とは|マズローの欲求段階説での位置づけ

承認欲求とは、他者から認められたい、自分を価値ある存在として認めたいと願う自然な欲求です。
心理学では尊重欲求、尊敬の欲求とも呼ばれ、恥ずかしいものでも、なくすべきものでもありません。
新人時代の筆者自身、上司の一言で一日の気分が決まっていたことがありますが、あれは欲求が異常だったのではなく、満たし方が外向きに偏っていただけでした。

承認欲求の意味と『尊重欲求』という呼び名

承認欲求は、誰かに褒められたいという軽い気持ちから、自分の存在を価値あるものとして確かめたい感覚までを含む広い概念です。
だからこそ、強く感じた瞬間に「自分は弱いのではないか」と責める必要はありません。
研修で「承認欲求が強い自分が嫌だ」と相談されたときに、まず「それは誰にでもある自然な欲求ですよ」と伝えると、表情が和らぐ場面は多くありました。
安心したうえで向き合えるかどうかが、その後の理解を左右します。

心理学ではこの欲求を尊重欲求、尊敬の欲求とも呼びます。
呼び名が違っても示している中身は近く、他者からの評価だけでなく、自分で自分を尊重したい気持ちも含まれています。
ここが見落とされやすい点です。
承認欲求を単なる「人からよく思われたい気持ち」とだけ捉えると、後半で扱う他者承認と自己承認の違いが見えにくくなるからです。

5段階のどこに位置するのか

マズローの欲求段階説は5段階で整理され、承認欲求は下から4番目に位置します。
生理的欲求、安全欲求、社会的欲求の上にあり、自己実現欲求の下にくる段階です。
土台となる眠る、食べる、身を守る、人とつながるといった欲求がある程度満たされた先に、ようやく「認められたい」という次の関心が立ち上がる。
そう考えると、承認欲求は人として不自然な逸脱ではなく、発達の流れに沿った自然な段階だとわかります。

マズロー自身は、この欲求を2つに分けて捉えました。
他者からの評価や名声を求める層と、自分で自分を尊重する層です。
この分け方は、現代でよく使われる他者承認と自己承認の区別にそのままつながります。
特に他者承認は相手の反応に左右されやすく、気分まで外部に預けやすい。
反対に自己承認は、評価の波があっても自分の軸を保ちやすいので、後の話を理解する土台になります。

観点他者からの評価を求める層自分で自分を尊重する層
主な焦点ほめられる、認められる、目立つ自分の価値を自分で確かめる
気分の動き周囲の反応に左右されやすい評価が揺れても保ちやすい
後半との接続他者承認自己承認

承認欲求は『悪いもの』ではない

承認欲求が問題になるのは、欲求そのものではなく、満たし方が他者頼みに偏ったときです。
褒められるかどうかで自己評価が上下すると、相手の機嫌や場の空気まで自分の状態に入り込んできます。
これはつらい。
新人時代の筆者もまさにそうでしたが、後から見れば、必要だったのは欲求を消すことではなく、内側で満たす回路を育てることでした。

この視点に立つと、承認欲求は抑え込む対象ではなく、扱い方を学ぶ対象になります。
自分の中に「認めたい」「認められたい」があると知るだけで、感情との距離は少し取りやすくなるでしょう。
誰にでもあるからこそ、否定から入らず、どう整えるかを考える。
そこから先が、本当に役立つ理解です。

他者承認と自己承認|2つの方向の違い

他者承認と自己承認は、どちらも「認められたい」という承認欲求に含まれますが、向いている先が違います。
前者は他人から認められたい気持ち、後者は自分で自分を認めたい気持ちで、同じ言葉でも重心は正反対です。
ここを分けて考えると、なぜ評価に振り回される人がいるのか、どこから整えれば楽になるのかが見えやすくなります。

他者承認=外からもらう承認

他者承認は、他人の評価や反応を通して満たされる承認です。
マズローの欲求段階説でいう尊重欲求にも重なり、社会の中で「認められている」と感じたい気持ちが土台にあります。
ただ、この承認は相手の気分、忙しさ、価値観に左右されるため、自分だけではコントロールしきれません。
SNSの「いいね」や返信の数で気持ちが上がったり下がったりするのは、その揺れがそのまま表れた状態です。

見分け方はシンプルです。
「同僚にできる人だと思われたい」「上司に褒められたい」は他者承認の言葉です。
相手の目線が主役になっているからです。
反対に「もっと自分を好きになりたい」「前よりうまくなりたい」は自己承認に近い表現になります。
読者自身も、口ぐせをこの対で並べてみると、どちらに寄っているかを見つけやすいでしょう。

自己承認=自分でつくる承認

自己承認は、外の評価を待たずに、自分の中で「これでよかった」と確かめる力です。
賞賛をまったく必要としないという意味ではありません。
むしろ、達成したこと、小さく進んだこと、昨日より少しできたことを自分で拾い上げる習慣に近いものです。
デシとライアンの自己決定理論でいう有能感に通じる部分があり、自分の成長を自分で認識できるほど、承認の土台は安定しやすくなります。

筆者が面談で「どんなときに満たされますか」と尋ねると、他者承認に偏った人は「褒められたとき」としか答えられないことが少なくありませんでした。
逆に自己承認が育っている人は、「やると決めたことをやれたとき」「昨日より少し落ち着いて話せたとき」のように、満たされる場面をいくつも挙げられます。
満たし方の引き出しが少ないと、気分の支えが外側だけになりやすいのです。

他者承認に偏ると疲れやすい理由

他者承認に重心が寄りすぎると、気分のハンドルを他人に預ける形になります。
褒められれば上がり、反応が薄ければ落ちる。
拒否回避欲求が強い人は、意見を飲み込み、相手の機嫌を先回りしてうかがいやすくなります。
賞賛獲得欲求が強い人は、自己アピールが増えやすい。
小島弥生らが2003年に作成・発表した尺度が、褒められたい気持ちと嫌われたくない気持ちを分けて捉えたのは、この行動の違いがはっきり表れるからです。

強さが増す背景には、幼少期に成果を出したときだけ褒められる経験、自己肯定感の低さ、SNSの反応が報酬として学習される仕組みがあります。
筆者自身も評価が得られない時期に「自分で自分のできたことを書き出す」習慣を始めてから、他人の反応に対する過敏さが下がりました。
他者承認をゼロにする必要はありませんが、自己承認の比率を上げるほど、評価に振り回されにくくなります。
ここを押さえておくと、後半の対処法がぐっと入りやすくなるでしょう。

承認欲求が強い人の特徴|あなたはどのタイプ?

承認欲求の強さは、目立って褒められたい「賞賛獲得欲求」と、目立たず嫌われたくない「拒否回避欲求」の2方向に分けて見ると整理しやすくなります。
社会心理学ではこの2因子を独立したものとして扱い、見た目は静かでも内側では強く認められたい気持ちが働いていることもある、と捉えます。
だからこそ、「おとなしいから承認欲求は弱い」とは言い切れないのです。

『褒められたい』が強い賞賛獲得タイプの言動

賞賛獲得タイプでは、注目される場面で自分を前に出したくなり、自己アピールや自慢、話題の中心になろうとする動きが増えやすくなります。
会話でも成果や実績を先に出したり、褒め言葉がもらえそうな場面を選んで発言したりしがちです。
これは単なる目立ちたがりというより、「見てもらえた」「認められた」という手応えで気持ちを満たそうとする反応だと考えるとわかりやすいでしょう。

この2因子の尺度は、小島弥生らによって2003年に作成・発表されました。
承認欲求を一枚岩ではなく、褒められたい方向と嫌われたくない方向に分けて捉える発想は、日本の社会心理学で基本の見方になっています。
組織研修で同じチェックを使うと、「自分はおとなしいから承認欲求は弱い」と思っていた人が、実は拒否回避型で高得点を出して驚く場面が少なくありません。
静かさと承認欲求の強さは、必ずしも反対ではないのです。

『嫌われたくない』が強い拒否回避タイプの言動

拒否回避タイプでは、相手の機嫌をうかがいながら話す、言いたいことを飲み込む、波風を立てないように八方美人になる、といった行動が目立ちます。
会議で発言できない人の中には、自信がないだけではなく、反対意見で場の空気を悪くしたくない気持ちが強く働いている場合があります。
筆者自身も、会議で言葉が出ない時期を「自信がないだけ」と片づけていましたが、拒否回避型だと気づいてからは、準備の仕方や発言の順番を変える方向が見えてきました。

賞賛獲得型が外へ向かう承認の取り方だとすれば、拒否回避型は傷つかないように身を引く承認の取り方です。
見え方は正反対でも、根っこにあるのはどちらも「認められたい」という同じ欲求です。
人前で強く出る人も、静かに場を合わせる人も、承認欲求が形を変えて表に出ているだけだと考えると、相手の行動が少し立体的に見えてきます。

10秒でできるタイプ別セルフチェック

まずは自分の反応を10秒だけ見てみましょう。
賞賛獲得側は、「注目されないと、かえって目立ちたくなる」「集まりでは、つい話題の中心を取りたくなる」と感じやすいです。
拒否回避側は、「相手が不機嫌だと急いで機嫌をとりたくなる」「目立つ行動で変に思われないか不安になる」といった反応が手がかりになります。
どちらか一方だけが強いとは限らず、場面によって両方が顔を出すこともあります。

おすすめなのは、直近1週間の場面を思い出して、どちらの反応が先に出たかを見てみることです。
人前で褒められたい気持ちが先に立ったのか、嫌われないように引いたのかを切り分けるだけでも、自分の行動の癖が見えやすくなります。
ここがわかると、次に何を整えればよいかがはっきりします。
たとえば、前に出すぎる人は「話す前に一呼吸置く」、引きすぎる人は「一言だけ意見を出す」といった調整がしやすくなるでしょう。

なぜ承認欲求が強くなるのか|原因と背景

承認欲求は、性格の問題だけで強まるものではなく、生育環境・自己肯定感・社会環境の3つが重なって育つ傾向があります。
成果を出したときだけ認められた経験があると、ありのままの自分で受け止められた感覚が薄く残りやすいからです。
そこに自己肯定感の低さやSNSの比較環境が加わると、他者の反応を追いかける流れが強まりやすくなります。

生育環境と『条件つきの承認』

幼少期に「テストで良い点を取ったときだけ褒められる」「役に立ったときだけ構ってもらえる」といった条件つきの承認が続くと、人は愛されるためには成果が必要だと覚え込みやすくなります。
家庭で十分に見てもらえなかった経験も同じで、認められた実感が育ちにくいまま大人になると、他人からの評価でその空白を埋めようとしやすいのです。
承認欲求が強い人の背景には、性格の欠点ではなく後天的な学習があると考えるほうが自然でしょう。

現場で社員の相談に関わっていると、評価面談の前後だけ極端に頑張る人が少なくありません。
その背景をたどると、子どもの頃に「結果を出したときだけ安心できた」という体験に行き当たることが多い。
目の前の行動だけを見ると打たれ弱さに見えますが、実際には、評価される場面でしか自分の価値を確かめられなかった名残だと捉えるほうが理解しやすいです。

自己肯定感の低さが引き金になる

自己肯定感が低いと、自分で自分を支える力が弱くなり、その不足分を他者の評価で埋めようとします。
ここで起きているのは、承認を「欲しい」から求めるというより、承認がないと自分の輪郭が保ちにくい状態です。
承認欲求の強さと自己肯定感の低さは、ほぼ裏表だと見てよいでしょう。

この状態になると、他人の反応が少しでも返ってきた瞬間に安心し、しばらくするとまた不安になる、という揺れが起こります。
だからこそ、褒められる場面や評価される場面を探し続ける行動がやめにくくなるのです。
自分を責めるより、まず「自分の内側だけでは満たしにくい構造がある」と理解することが出発点になります。

SNSと『いいね』が欲求を増幅させる仕組み

SNSの『いいね』は、承認欲求を持つ人の弱点をそのまま刺激しやすい仕組みです。
反応が返ると脳の報酬系が動き、ドーパミンが放出されます。
さらに、報酬が得られる直前の行動が強化される強化学習の回路が働くため、投稿する、確認する、また投稿する、という流れが習慣化しやすくなります。

筆者自身、通知をオフにするまでスマホを置けなかった時期がありました。
いいねの数でその日の気分が変わる感覚は、自分の意思の弱さだけではなく、反応を追わせる仕組みで説明できるとわかったとき、ようやく腑に落ちたのです。
社会的比較が起きやすい環境では、他人の充実した投稿を見るたびに焦りが増しやすく、承認を求める気持ちはさらに加速します。
SNSは便利ですが、見続けるほど欲求が膨らみやすい場でもあります。

対処1|自己承認を育てて満たす

承認欲求は、なくすよりも満たし方を変えるほうが扱いやすい。
土台になるのが自己決定理論で、デシとライアンが提唱した自律性・有能感・関係性の3欲求が満たされると、外からの評価に振り回されにくい内発的動機づけが育ちやすい。
つまり、自己承認は気合いで作るのではなく、日常の設計で育てるものです。

自律性・有能感・関係性の3つを満たす

自律性は「自分で決めた感覚」、有能感は「できる感覚」、関係性は「つながっている感覚」を指します。
この3つが満たされると、誰かに褒められたかどうかだけで気分が上下しにくくなります。
承認されたい気持ちを否定する必要はなく、他者承認だけに寄せすぎないことがポイントです。
たとえば、コーチングの場では「他人にどう思われるか」を目標から外し、「自分が試したいこと」に言い換えるだけで、評価への執着が目に見えて下がるクライアントが多く見られました。
自分で選んだという感覚が残ると、行動の手応えが外部評価より先に立つからです。

『他人軸』の目標を『自分軸』に置き換える

目標設定は、他人の期待軸のままだと承認待ちになりやすいのが難点です。
たとえば「上司に評価されるため」ではなく、「自分が興味を持てること」「自分の価値観に合うこと」を基準に書き換えると、達成した瞬間に自己承認へつながりやすくなります。
誰かの期待に応える形では、結果が出ても安心が短く終わりがちです。
けれど、自分が選んだ理由が明確なら、途中のつまずきも「自分で決めた道の一部」として受け止めやすくなります。
承認を外に預けず、まず自分の中で納得できる形に整えることが出発点でしょう。

小さな達成を記録して有能感を積む

有能感を育てるには、目標を小さく分割して達成回数を増やすのが有効です。
大きな目標は、進んでいても手応えが見えにくく、外部評価がない日は特に不安が強まりやすいからです。
小さな成功体験をメモに残すと、「できた」という事実が蓄積され、評価の有無に左右されにくい回路が育ちます。
筆者自身も、毎晩その日できたことを3つ書く習慣を続けたら、上司の反応がない日でも気分が落ちにくくなりました。
さらに、完璧主義をゆるめて「60点で出す」練習を重ねると、行動の回数そのものが増え、自己承認の材料も自然に増えていきます。
小さく進めて、きちんと残す。
これがいちばんおすすめです。

対処2|他者の評価を手放す|課題の分離と考え方の見直し

アドラー心理学の課題の分離は、対人場面で苦しくなったときに「これは誰の課題か」と問い直し、自分が背負うべきものと相手に委ねるべきものを分ける考え方です。
拒否回避が強い人ほど、相手がどう感じるかまで自分の責任として抱え込みやすく、そこで消耗が積み重なります。
線を引き直すだけで、関係そのものを壊さずに心の重さを下げやすくなるのです。

『これは誰の課題か』で線を引く

対人で息苦しさが出る場面では、まず「相手の機嫌や評価は誰の課題か」を確認します。
アドラー心理学の『課題の分離』は、こちらがコントロールできる行動と、相手がどう受け取るかという他者の課題を切り分ける発想です。
たとえば、丁寧に伝える、約束を守る、必要な配慮をするところまでは自分の課題ですが、その後に相手がどう評価するかは相手の側に残ります。
ここを混同すると、相手の感情まで背負おうとしてしまい、対人関係が常に緊張したものになるでしょう。

筆者が研修で「その人の機嫌は誰の課題ですか」と問うと、参加者が「あれは相手の課題か」と気づいて、ふっと肩の力を抜く場面を何度も見てきました。
拒否回避型ほど「嫌われないようにしなければ」と先回りし、無理に機嫌を取ったり、言いたいことを飲み込んだりしがちです。
けれど、相手の反応まで自分で処理しようとすると、守るための行動がそのまま消耗源になります。
線を引き直すことは冷たさではなく、必要以上に自分を削らないための整理なのです。

評価を気にする思考のクセに気づく

課題を分けたうえで、認知の見直しも併用すると効果が安定します。
認知行動療法では、瞬間的な決めつけである自動思考に気づき、「本当にそうだろうか」「他の見方はないか」と問い直していきます。
たとえば、返信が遅いだけで「嫌われたに違いない」と結論づけるのは、出来事そのものではなく、頭の中で一気に作られた解釈です。
そこに気づけると、評価への過敏な反応は少しずつやわらぎます。

この見直しで役立つのは、考えた内容を短く書き残すことです。
状況、浮かんだ言葉、別の見方を並べるだけでも、思考のクセは見えやすくなります。
筆者自身も、メールの返信が遅い相手に嫌われたのだと決めつけて落ち込んだことがありましたが、問い直してみると、単に相手が多忙だっただけでした。
自動思考は事実ではなく、事実に貼りついた解釈だと分かると、必要以上に傷つかずにすむようになります。

『嫌われる勇気』をどう日常に使うか

『嫌われる勇気』の考え方は、他人に合わせすぎて自分を見失う人にこそ役立ちます。
ただし、これを「人の気持ちを気にしなくてよい」という雑な開き直りに変えてはいけません。
課題の分離は他者を切り捨てるための技ではなく、自分の人生の手綱を自分に戻すための線引きです。
相手を尊重したうえで、背負わなくてよいものを手放す、そのバランスが要になります。

日常では、まず「自分の課題としてやること」と「相手の課題として残ること」を言葉にしてみてください。
必要な配慮はきちんと行い、その後の評価は相手に任せる。
さらに、心がざわついたら「本当にそうだろうか」と一度だけ問い返す。
こうした小さな習慣を積み重ねることで、対人場面の圧に振り回されにくくなります。
おすすめです。

身近に承認欲求が強い人がいるときの接し方

承認欲求が強い相手に対しては、まず頭ごなしに否定しないことが出発点になります。
自慢やアピールを真正面から打ち消すと、相手は余計に認められようとして話を増幅させやすいからです。
関係をこじらせにくくするには、いったん受け止めてから、必要な伝え方を選ぶほうが現実的でしょう。

まず否定せずに受け止める

柔らかい口調で「そうなんですね」と返すだけでも、相手には話を聞いてもらえた感覚が生まれます。
承認を求めている人は、内容そのものよりも、まず自分の存在や言葉を扱ってもらえたかどうかに敏感です。
ここで否定から入ると、防衛が強まり、ますますアピールが激しくなることがあるため、最初の一言は関係の温度を下げる役割を持ちます。

過程を具体的にほめて承認を返す

効果的なのは、結果だけをほめるのではなく、どこを工夫したのかを具体的に言葉にすることです。
「すごいね」より「ここを丁寧にやったんですね」と返すほうが、相手の渇望はやわらぎやすくなります。
筆者が組織で見てきた現場でも、自慢の多い社員に否定で接していたチームより、過程を具体的にほめたチームのほうが、本人の言動が落ち着いていきました。
漠然とした賞賛では足りず、何が評価されたのかが見えることに意味があります。

応えすぎず自分を守る距離感

ただし、相手の承認欲求は相手の課題でもあります。
すべてに付き合おうとすると、自分の時間や気力が削られてしまうので、どこまで応えるかを決めておくことが必要です。
筆者自身、承認欲求の強い知人に全部付き合って疲れ果てたことがありますが、応える範囲を先に決めて距離を取ったら、かえって関係は続きました。
課題の分離は、自分を守る線引きとしてもそのまま役立ちます。

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小野寺 美咲

心理学科卒。企業の人事・組織開発部門で産業心理学を実務に応用してきた経験から、認知バイアスやコミュニケーション心理学など「日常で使える心理学」を伝えます。

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