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目標達成の心理学|続く人がやる5つの技術

更新: 小野寺 美咲
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目標達成の心理学|続く人がやる5つの技術

目標達成とは、意志の強さだけで決まるのではなく、行動をどう設計するかで結果が変わる心理学の技術である。筆者自身も新年になるたびに「運動する」と決めては数日で終わらせ、財布の中で眠るジムの会員証を眺めてきたが、産業心理学を学んで曜日と時間を固定する設計に変えた途端、続けられるようになった。

目標達成とは、意志の強さだけで決まるのではなく、行動をどう設計するかで結果が変わる心理学の技術である。
筆者自身も新年になるたびに「運動する」と決めては数日で終わらせ、財布の中で眠るジムの会員証を眺めてきたが、産業心理学を学んで曜日と時間を固定する設計に変えた途端、続けられるようになった。
1981年11月に整理されたSMARTの考え方と、1990年代に広がった実行意図の発想を土台にすると、目標は「がんばるもの」ではなく「動ける形に置き換えるもの」だと見えてくる。
この記事では、目標設定理論からif-thenプランニング、WOOP、自己効力感、進捗の見える化までを順にたどり、三日坊主を越えるための設計を日常に落とし込んでいく。

なぜ目標は続かないのか:意志ではなく設計の問題

目標が続かない原因は、意志の弱さよりも、行動が起きる設計になっていないことにあります。
人は「やる」と決めていても、次に何をするかが曖昧だと迷い、その迷いが後回しを生みます。
達成率は性格ではなく設計で変えられる、ここが出発点です。

三日坊主は『意志が弱い』せいではない

筆者も『今年こそ毎日勉強する』と手帳に大きく書いたことがありますが、翌週にはその手帳を開かなくなっていました。
失敗の理由は気合いが足りなかったからではなく、いつ、どこで、何を始めるかが決まっていなかったからです。
意志に頼る設計は、忙しさや疲れが入った瞬間に崩れます。
たとえやる気が残っていても、開始の合図がなければ行動は立ち上がりません。

職場のメンタルヘルス研修を設計していたときも、根性論より仕組み化のほうが行動変容を生むと何度も感じました。
参加者に「頑張る」と言わせるより、会議の前に1分だけ呼吸を整える、終業前に一つだけ振り返りを書く、といった小さなきっかけを組み込んだほうが継続しやすいのです。
三日坊主は人格の問題ではなく、行動の入り口が空いていない状態だと考えるほうが、対策は立てやすくなります。

曖昧な目標は脳が行動に変換できない

『健康になりたい』『英語を頑張る』という目標は、気持ちは伝わっても、脳が次の一手へ変換できません。
何を・いつ・どれだけやるかが決まっていない目標は、実行の場面で毎回判断を要求するため、そこでエネルギーが消耗します。
逆に言えば、目標設定理論が示すように、具体的で適度に困難な目標は成果につながりやすいのです。
SMARTのように具体性、測定可能性、実行可能性、現実性、期限を点検すると、曖昧さが行動単位にほどけていきます。

この「決め方」の差は、継続率にもはっきり出ます。
事前に行動計画を決めた群と決めなかった群では継続率に大きな差が出ており、if-thenプランニングを使った群の運動継続率は91%、通常の目標設定のみの群は39%でした。
行動の事前計画だけで目標達成率が約40%上がったという報告もあり、設計が結果を押し上げることは明らかです。
事前に「もしXが起きたら、Yをする」と結んでおけば、意志ではなく状況が行動のスイッチになります。

この記事で扱う5つの技術の全体像

この先では、目標を成果に変えるための流れを、一本の地図としてたどっていきます。
最初に目標の立て方を整え、次に行動を自動化し、願望を計画へ落とし込みます。
そのうえで自己効力感を育て、習慣化へつなげ、最後に報酬の落とし穴まで確認します。
順番に積み上げることで、やる気に左右されない設計が見えてきます。

土台になるのは、実行意図、WOOP、自己効力感、進捗モニタリング、習慣化の5つです。
たとえば、望みを気合いで抱えるのではなく、障害まで先に書き出してPlanへつなげると、行動はずっと具体的になります。
小さな成功を重ねながら記録し、達成経験を増やしていくと、続ける自信も育ちます。
次のセクションでは、まず目標をどう立てるかから順に見ていきましょう。

技術1 正しい目標の立て方:目標設定理論とSMART

目標は、気合いより設計で達成率が変わる。
ロックとレイサムが提唱した目標設定理論は、曖昧で簡単な目標よりも、具体的で少し難しい目標のほうが成果を引き出すと考える。
日々の行動をどう組むかで結果は変わるため、まずは目標の質を見直すところから始めたい。

目標設定理論:具体的で少し難しい目標が伸びる

エドウィン・ロックとゲイリー・レイサムが体系化した目標設定理論では、達成を左右するのは「やる気の強さ」そのものではなく、目標の置き方だとされる。
ロックは『困難で具体的な目標』が『簡単・曖昧な目標』より高い成果を生むと示した。
たとえば「もっと頑張る」より「毎日30分走る」のほうが、何をすればよいかが明確になり、行動に移しやすい。
しかも、少し背伸びが必要な水準だと、手を抜きにくくなる。

達成を支える4条件は、具体性・適度な困難さ・納得感(受容)・フィードバックである。
難しすぎる目標は途中で投げ出しやすく、簡単すぎる目標は成長の手応えが薄い。
自分で納得して受け入れた目標であることも効く。
人に押しつけられた課題は、頭では理解しても行動が続きにくいからだ。
筆者が「英語をできるようにする」とだけ決めて半年放置したのに、「毎朝7時に単語アプリを15分」と具体化した途端に前へ進んだのは、この差をそのまま体験した形だった。

SMARTの5要素で目標を点検する

SMARTは、目標を実行可能な形に点検するチェックリストである。
原義はSpecific・Measurable・Assignable・Realistic・Time-relatedで、1981年11月のManagement Review掲載、ジョージ・T・ドランの論文が初出だ。
特に抜けやすいのがMeasurableとTime-relatedで、「どこまでできたら達成か」と「いつまでにやるか」が曖昧だと、行動の終わり方が決まらない。
人事で評価面談を設計したときも、測定可能な目標にした社員ほど、期末に達成度を自分の言葉で語れた。

要素意味点検の観点
Specific具体的何をするかが一目で分かるか
Measurable測定可能数字や基準で確認できるか
Assignable割り当て可能誰がやるかが明確か
Realistic現実的今の条件で実行できるか
Time-related期限付きいつまでにやるかがあるか

SMARTは目標を「やる気の宣言」から「実行の設計図」に変える。チェックリストとして見ると、足りない要素がすぐ見えるのが利点だ。

『痩せたい』をSMART目標に書き直す例

「痩せたい」は願望としては自然だが、そのままでは行動に落ちない。
そこで、何を、どれだけ、いつまでに、どうやって行うかを入れて書き直す。
たとえば「3か月で体重を3kg減らすため、平日は1駅分歩く」とすると、Specificは「平日は1駅分歩く」、Measurableは「3kg」、Time-relatedは「3か月で」がそれぞれ入る。
さらに、毎朝7時に単語アプリを15分使うように、行動の起点を時間で固定すると、迷いが減って続けやすくなる。

書き換えの流れはシンプルだ。
まず願望を一文で書き、そのあとに数字、期限、行動手段を足していく。
「痩せたい」→「3か月で体重を3kg減らしたい」→「平日は1駅分歩く」→「夕食後に間食をしない」 このように、抽象語を具体行動へ置き換えるだけで、目標はそのまま今日の予定になる。
おすすめです。
今の目標を1つ取り出して、同じ形で書き直してみてください。

技術2 行動を自動化する:実行意図とif-thenプランニング

実行意図は、目標を「やる気」のままで終わらせず、行動が起きる条件まで先に決めてしまう技術です。
目標意図が「何を成し遂げたいか」だとすれば、実行意図は「いつ・どこで・どう行うか」を固定する発想で、ここが抜けると人は動き出しにくくなります。
ゴルヴィツァーが1990年代に研究したif-thenプランニングは、その抜けを埋めるための具体的な型でした。

目標意図と実行意図はどう違うのか

目標意図だけでは、たいてい「運動したい」「勉強したい」で止まります。
問題は、やりたい気持ちがあっても、始める瞬間の条件が決まっていないことです。
実行意図はそこを補い、「朝食を食べ終えたら散歩する」「電車に乗ったら単語帳を開く」のように、行動の入口を先に作ります。
筆者自身も「時間があれば運動する」では一度も動けませんでしたが、「もし朝食を食べ終えたら、その足で10分散歩する」に変えた途端、3週間続きました。
目標は同じでも、開始条件があるだけで現実の動きは変わるのです。

if-thenプランニングの作り方

if-thenプランニングは「もしXが起きたら、Yをする」と事前に決める手法です。
ゴルヴィツァーが1990年代に研究した実行意図は、状況そのものを合図にして行動を起こすので、その場で意志を奮い立たせる負担が軽くなります。
作り方は3ステップです。
まず目標を一つ決め、次に時間・場所・先行行動のどれをきっかけにするか選び、最後に一文へまとめます。
たとえば「もし朝の歯みがきを終えたら、机に向かって5分だけ予定を書く」「もし昼休みに席へ戻ったら、最初の3分でメールを開く」のように、具体的で短いほど使いやすいでしょう。

ステップやること
1目標を決める毎日10分歩く
2きっかけを選ぶ朝食後
3文にするもし朝食を食べ終えたら、その足で10分散歩する

誘惑に勝つif-thenの応用例

if-thenは「やること」を増やすだけでなく、「やめたい誘惑」を折り返す防御にも使えます。
たとえば通勤電車でつい動画を見てしまうなら、「もし電車に乗ったら、まず単語帳アプリを開く」と決めておくと、最初の一手が置き換わります。
もしスマホを手に取りたくなったら、まず机の上の本を1ページ開く、という形でもかまいません。
続いた群の運動継続率は91%で、通常の目標設定群は39%でした。
この差が示すのは、意志の強さより設計の差が行動を左右するという事実です。
おすすめです。
まず一つ、自分の生活で起きやすい場面に合わせて作ってみてください。

技術3 願望を計画に変えるWOOP

WOOPは、願望を「こうなりたい」で終わらせず、障害まで含めて計画に変える技術です。
ガブリエル・エッティンゲンとピーター・ゴルヴィツァーが開発し、心理対比(メンタル・コントラスティング)を土台にしています。
ポジティブに未来を描くこと自体は悪くありませんが、障害を見ないままだと行動のスイッチが入りにくいのです。
ここでは、その弱点をどう補い、実際に手を動かす形へ落とし込むかを見ていきましょう。

ポジティブに描くだけでは動けない理由

『ポジティブに成功を思い描けば叶う』という通説は、気分を上げる力こそあっても、行動を生み出す力までは保証しません。
エッティンゲンは、成功のイメージだけを膨らませると、脳がすでに達成したような満足を覚え、かえって努力のエネルギーが抜けていくと指摘しています。
つまり、夢を見ることと、夢に向かって動くことは別物だということです。

そこで役立つのが心理対比です。
望む未来の明るさを思い浮かべたうえで、そこを妨げる現実の壁をあえて同じテーブルに乗せる。
希望だけを膨らませるのではなく、障害もセットで見えるようにするからこそ、願望が「やりたい気持ち」から「動く理由」に変わります。
筆者自身も『資格を取って活躍する自分』を思い描くほど勉強しなくなった時期があり、そこで初めて、気持ちの高揚だけでは机に向かえないと気づきました。

WOOPの4ステップを順にやってみる

WOOPは、Wish(願望)・Outcome(成果)・Obstacle(障害)・Plan(計画)の4段階で進めます。
まずWishでかなえたいことを一つだけ具体的に書きます。
次にOutcomeで、かなったときの手応えや嬉しさを言葉にします。
最後にObstacleで、その願望を止める自分の中の障害を正直に掘り出します。
ここが要です。
外の環境のせいにするより、「夜は疲れて開く気が起きない」「先延ばしにしやすい」といった内的な癖に目を向けたほうが、対策はずっと作りやすくなります。

筆者がつまずいたのも、このObstacleでした。
勉強時間がないのではなく、夕食後になると眠くなって本を開く気が失せていたのです。
そこでWOOPの形に沿って書き出してみると、願望の輪郭がぼんやりした「がんばりたい」から、対処すべき具体点を含んだ設計図へ変わりました。
願望を立てるだけで終わらせず、障害を一度はっきり見える形にすること。
これが、行動につながる第一歩になります。

Planはそのままif-thenにつながる

WOOPのPlanは、そのままif-thenの形に落とし込めます。
たとえば「もし夕食後に眠くなったら、5分だけ問題集を開く」と決めるだけで、障害が出た瞬間の動きが固定されます。
これは技術2ととても相性がよく、WOOPで障害を洗い出し、if-thenで対策を固定する流れにすると、気合いに頼らない実行の回路ができます。

この形のよさは、行動のハードルを下げるところにあります。
5分だけなら始めやすく、始めてしまえば思った以上に続くことも少なくありません。
筆者もこの一文を決めてから、夕食後の「もう無理かも」という感覚に引っ張られにくくなりました。
おすすめです。
願望を立てたら、次は障害を一つ選び、if-thenで対処を書いてみてください。
そうすると、計画は空想ではなく、実際に動ける形になります。

技術4 『できる』感覚を育てる:自己効力感の高め方

自己効力感は、アルバート・バンデューラが提唱した「自分はできる」という確信であり、継続の土台になる感覚です。
目標が難しく見えるほど、先に必要になるのは気合いよりも「やり切れる見込み」でしょう。
だからこそ、この感覚をどう育てるかで、途中で折れやすい人と粘り強く進める人が分かれます。

自己効力感とは『自分はできる』という見込み

自己効力感とは『自分はこれをやり遂げられる』という見込みのことです。
単なる自信よりも具体的で、目の前の課題に対して「やってみれば届く」と感じられるかどうかに近い概念だと考えるとわかりやすいでしょう。
バンデューラが示したのは、この見込みが高いほど、失敗を避けるのではなく、難しい目標にも粘り強く向かえるという点でした。
継続が苦しくなる場面で支えになるのは、まさにこの内側の判断です。

4つの源泉のうち最強は『小さな成功体験』

自己効力感を育てる源泉は、達成経験、代理経験、言語的説得、生理的情緒的喚起の4つです。
影響力は達成経験>代理経験>言語的説得>生理的情緒的喚起の順とされ、とくに自分自身の成功体験が最も強く効きます。
似た立場の人の成功を見る代理経験や、信頼できる人から励まされる言語的説得も力になりますが、土台を作るのはやはり「自分でできた」という記憶です。
体調の良し悪しや緊張、気分の落ち込みといった生理的情緒的喚起も影響しますが、それだけで判断が決まるわけではありません。

研修の場でも、最初の課題をあえて簡単にして成功させると、その後の難課題に向かう姿勢が明らかに変わります。
受講者は「できた」を一度経験しただけで、表情も手つきも変わるのです。
これは理屈ではなく、成功が次の行動を呼び込むからでしょう。

スモールステップで達成経験を積み上げる

そこで効くのが、目標を細分化するスモールステップです。
スモールステップはスキナーのプログラム学習の原理のひとつで、いきなり大目標を追うのではなく、達成可能な小目標を刻んで成功を積み上げていく方法です。
筆者自身も大きな資格目標の前で『どうせ無理』と固まっていた時期がありましたが、『まず1日10分・1単元だけ』に切り替えたところ、毎日クリアするうちに『できるかも』へ感覚が変わりました。
小さな達成は小さいまま終わらず、次の行動の敷居を下げる働きを持っています。

たとえば、学習なら「今日はテキストを1ページ読む」「問題を3問だけ解く」といった単位で区切るとよいでしょう。
成功体験が増えるほど、自己効力感は自然に育ちます。
おすすめの進め方は、最初から完璧を狙わず、続けられる単位を先に決めることです。
そうして積み上がった「できた」の記録が、難しい課題に向かうときの静かな支えになります。
ぜひ試してみてください。

技術5 進捗を見える化して習慣にする

進捗を見える化すると、行動は「やったつもり」で終わらず、続いているかどうかをその場で確認できるようになります。
記録・確認そのものがセルフ管理として働き、達成率を押し上げるからです。
特に紙やアプリに残す、あるいは誰かに公開する形にすると、頭の中だけで抱えるよりも行動が固定されやすくなります。

記録するだけで達成率が上がる理由

進捗モニタリングは、ただの振り返りではありません。
ハーキンらの2016年、Psychological Bulletin にまとめられた138研究・約19,951人の分析では、進捗を頻繁に確認する介入が行動変容を促すと示されています。
要するに、目標を見続ける行為そのものが、次の行動を選びやすくするのです。
カレンダーに印をつける、アプリで回数を数える、SNSで宣言する、といった単純な方法が効くのはこのためでしょう。

筆者もランニングを「カレンダーに走った日を赤丸で記録する」だけで続けやすくなった経験があります。
赤丸が増えると連続性が見えて、今日はやめておこうという気持ちよりも、途切れさせたくない感覚が前に出てきました。
途中で2日空いても、ゼロに戻さず再開したことで、気持ちの切れ目を最小限にできました。
記録は気合いの代わりではなく、再開しやすさを残す仕組みです。

習慣化は平均66日、ただし幅は18〜254日

習慣化までの目安は、ラリーらの2009年の研究で平均約66日でした。
けれども、この数字だけを見て「2か月で誰でも身につく」と考えるのは早計です。
参加者96人を約12週間観察した研究では、約95%が習慣化に成功したものの、必要日数は18日から254日まで大きく開きました。
行動の難しさや、日常の中でどれだけ繰り返しやすいかで、定着の速度はずいぶん変わります。

ここで役立つのが、短期の勢いではなく長めの見積もりです。
『3週間で習慣化』という言い方は耳ざわりがよいものの、実際の生活では続けるほどに波が出ます。
だからこそ、最初から「しばらくは定着の途中」と考えておくほうが、途中で遅くなっても崩れにくいのです。
2か月を超えてから自然に動けるようになる感覚は、まさにそこにあります。

週4回以上が習慣化のひとつの目安

継続のコツは、毎日完璧にやることではありません。
ある研究では、週4回以上の実行が習慣化の目安とされました。
頻度が一定以上あると、行動が「たまにやる特別なこと」から「生活の一部」へ移りやすくなります。
逆に、空白が長くなると再開の摩擦が増え、記録も気持ちも途切れやすい。
だから、最低でも2か月は記録を続け、回数を保つ設計にしてみてください。

このときおすすめなのは、ゼロか百かで考えないことです。
2日空いたら失敗ではなく、次に再開できた時点で流れは戻せます。
おすすめの運用は、できた日だけを静かに積み上げること。
完璧さより、週の中で何回触れたかを数えましょう。
続ける回数が見えると、習慣はただの努力ではなく、日常の手触りになります。

やる気を下げる落とし穴:報酬とアンダーマイニング効果

ご褒美は、やる気を上げるはずなのに、使い方を誤るとかえって火を弱めます。
もともと好奇心や関心で続いていた行動に外的報酬を足すと、行動の意味が「やりたい」から「もらうためにやる」へずれやすいからです。
筆者も読書好きだったのに「月10冊で自分にご褒美」と決めた途端、冊数稼ぎが目的になって楽しさが薄れたことがあります。
報酬の置き方は、続ける力そのものを左右します。

ご褒美が逆効果になるアンダーマining効果

アンダーマイニング効果とは、内発的動機づけで行っていた行動に外的報酬を与えることで、かえって意欲が下がる現象です。
内発的動機づけは好奇心や関心にもとづく自発的な動きで、外発的動機づけは金銭や評価のような外からの報酬で動くことを指します。
1971年にエドワード・デシらがソマパズルを用いた実験で、報酬を与えられた群は報酬がなくなると取り組み時間が減少しました。
つまり、「面白いからやる」が「報酬のためにやる」にすり替わると、報酬が消えた瞬間に手も止まりやすいのです。

ここで気をつけたいのは、報酬そのものが悪いのではなく、報酬が行動の意味を上書きしてしまう点でしょう。
たとえば読書や運動、勉強のように、続けるほど手応えが育つ行動では、毎回のご褒美が主役になると本来の楽しさが見えにくくなります。
筆者の場合も、読みたい本を自分で選ぶように戻したら、冊数より内容に目が向くようになり、自然に読む時間が増えました。
達成の節目に小さく祝う程度にとどめるのが、行動そのものを守る使い方です。

内発的動機づけを守る報酬の使い方

内発的動機づけを守りたいなら、報酬は「続けさせるための釣りえさ」ではなく、行動の邪魔をしない補助として置くのがよいです。
たとえば、毎日やるたびに物で釣るより、1週間続いたら静かに振り返る、一区切りついたら好きな飲み物で祝う、といった形のほうが自然です。
行動の直後に必ず報酬を結びつけると、楽しさより見返りが目立ってしまうためです。

大切なのは、報酬を増やすことではなく、行動の主導権を保つことにあります。
自分で読みたい本を選ぶ、走る距離を自分で決める、勉強の順番を組み替える。
こうした小さな選択があるだけで、「やらされている感じ」は薄れます。
おすすめは、まず報酬を足す前に、その行動が本来持っている面白さを一つ書き出してみることです。
そこを残したままにしておきましょう。

自己決定理論:自律性・有能感・関係性を満たす

持続する動機づけを考えるうえで、自己決定理論はデシとライアンが提唱した重要な枠組みです。
この理論は、自律性・有能感・関係性という3欲求が満たされると、人は報酬だけに頼らず行動を続けやすいと考えます。
自律性は「自分で選んだ」、有能感は「できている」、関係性は「誰かとつながっている」という感覚に対応します。

この3つは、日常の行動設計にもそのまま使えます。
たとえば、予定を他人に決められすぎないようにする、自分の成長が見える記録を残す、同じ目的を持つ人とゆるく共有する、といった工夫です。
報酬がなくても続く人は、たいていこの3欲求のどれかを満たす仕組みを持っています。
自分で選べて、できている感覚があり、誰かとつながっている。
その土台が整えば、ご褒美に引っ張られなくても行動は育っていくでしょう。

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小野寺 美咲

心理学科卒。企業の人事・組織開発部門で産業心理学を実務に応用してきた経験から、認知バイアスやコミュニケーション心理学など「日常で使える心理学」を伝えます。

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