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アサーティブとは|心理学の仕組みと活用法

更新: 小野寺 美咲
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アサーティブとは|心理学の仕組みと活用法

アサーティブとは、自分の考えや気持ちを正直に伝えながら、相手の意見や感情も同じように尊重する自己表現の方法である。人事・組織開発の現場では、断れずに仕事を抱え込んでしまう人や、正論なのに言い方がきつくて孤立する人を数多く見てきたが、伝え方の型を知るだけで関係が変わる場面は少なくない。

アサーティブとは、自分の考えや気持ちを正直に伝えながら、相手の意見や感情も同じように尊重する自己表現の方法である。
人事・組織開発の現場では、断れずに仕事を抱え込んでしまう人や、正論なのに言い方がきつくて孤立する人を数多く見てきたが、伝え方の型を知るだけで関係が変わる場面は少なくない。
自己表現は大きく、我慢して飲み込む非主張的、押し通す攻撃的、自分も相手も大切にするアサーティブの3つに分かれ、まず自分の傾向を見分けることが実践の入口になる。
アサーティブは誠実・率直・対等・自己責任の4本柱に支えられ、DESC法と場面別の例文を使えば、断る場面でも依頼する場面でも、関係を損なわずに伝え方を組み立てられるようになる。

アサーティブとは何か|自分も相手も大切にする自己表現

アサーティブとは、自分の考えや気持ちを正直に伝えながら、相手の意見や感情も同じように尊重する自己表現だ。
攻撃して押し切るのでも、我慢して飲み込むのでもない。
両者のあいだで合意点を探し、対話を成立させる姿勢こそが核心になります。

『言いたいことを言う』ではなく『お互いを尊重する』のがアサーティブ

現場でアサーティブの定義を伝えると、「自己主張って、要するに言いたいことを言うことでしょう」と受け取られがちです。
ですが、実際にはそこが出発点ではありません。
自分の思いを隠さずに出しつつ、相手にも主張する権利があると認めること。
そこに、アサーティブの土台があります。
筆者が研修設計に関わった際も、「自己主張=わがまま」と思い込んで発言を抑えていた受講者が、定義を知っただけで表情を変えました。
言葉の意味が整理されると、態度まで変わることがあるのです。

この考え方を支えるのは、誠実、率直、対等、自己責任という4つの柱です。
どれもテクニックの前にある態度であり、相手を下に見ないことと、自分を卑下しないことを両立させます。
会議で正論を強い口調で言って浮いてしまった同僚を見たときも、内容は正しいのに伝え方で損をするもったいなさを実感しました。
伝える価値と、伝わる形は別だと意識しておくと、対人場面の見え方がかなり変わります。

アサーションとアサーティブの違い

『アサーション(assertion)』は自己表現の手法や訓練の総称で、『アサーティブ(assertive)』はその状態や態度を表す形容詞です。
似た言葉ですが、役割は分かれています。
前者は学ぶ対象、後者は身につけた状態、と整理するとすっきりします。
混同したままだと、技法の話をしているのか、心構えの話をしているのかが曖昧になり、読み手も実践しづらくなるでしょう。

ここで押さえたいのは、アサーティブが単なる会話術ではない点です。
言葉づかいを整えるだけでなく、「自分にも相手にも主張する権利がある」という認知を扱うからこそ、行動に一貫性が出ます。
たとえば、頼まれごとを断れず抱え込む人は非主張的に傾きやすく、正しいことをきつい言い方でぶつける人は攻撃的に寄ります。
どちらも関係をこじらせやすい。
だからこそ、言えない・言いすぎるの両方を見直す視点が必要になります。

アサーティブが注目される背景

アサーティブが今あらためて注目されるのは、職場の多様化やテレワークの広がりで、ちょっとしたすれ違いが起きやすくなったからです。
対面なら表情や空気で補えた部分が、画面越しや短いメッセージでは抜け落ちやすい。
さらに、ハラスメント意識が高まったことで、強く言えば通る時代でもなくなりました。
我慢か攻撃かの二択では、どちらに転んでも消耗しやすい。
その間にある第3の選択肢として、アサーティブの価値があるのです。

たとえば、頼まれごとを断れず予定を抱え込み、気づけば自分だけが疲れている。
あるいは、正しいことを指摘したのに言い方がきつくて関係がこじれる。
こんな経験はありませんか。
どちらも珍しくない失敗ですが、見方を変えると、相手を尊重しながら自分の立場も守る練習の余地がある場面です。
アサーティブは、その練習を支える考え方として役立ちます。
ひとつずつ身につけていきましょう。

3つの自己表現タイプ|攻撃的・非主張的・アサーティブ

アサーティブとは、自分の考えや気持ちを正直に伝えながら、相手の意見や感情も同じように尊重する自己表現です。
攻撃的に押し通すのでも、非主張的にのみ込むのでもなく、その間にある第3の選択肢として整理すると理解しやすくなります。
日常では、言えずに抱え込む場面と、言いすぎてしまう場面が往復しやすいものです。

アサーションは、そのアサーティブな伝え方を身につけるための手法や訓練の総称で、アサーティブはそのときに到達した状態や態度を指します。
つまり、練習の名前がアサーション、身についた姿がアサーティブだと分けておくと混乱しません。
自分も相手もOKとみなす姿勢が核にあり、対話を成立させる土台になるのです。

非主張的タイプ:我慢して後でモヤモヤする人

非主張的タイプは、自分の気持ちを飲み込み、相手を優先してしまう自己表現です。
その場は角が立たずに済みますが、言いたいことを抑えた分だけ心の中に未完了感が残りやすく、後から「なぜ言えなかったのか」と繰り返し考えてしまいます。
自分を後回しにする『I'm not OK, You're OK』の構えと見ると、何が起きているかがはっきりします。

このタイプのやっかいさは、静かに不満が積み上がる点にあります。
最初は「今回はいいや」で済んでも、回数が増えるほど関係の中で自分の希望が見えなくなり、いずれ小さなきっかけで疲れが表に出やすくなるからです。
仕事では言えるのに家族には我慢してしまう、そんな形で相手によって出方が変わるのも珍しくありません。
筆者自身を振り返っても、仕事では言えるのに家族にはため込み、後で八つ当たりのように攻撃へ振れていた時期がありました。

攻撃的タイプ:つい強く言いすぎてしまう人

攻撃的タイプは、自分の主張を前面に出し、相手を押し切ろうとする自己表現です。
主張がはっきりしているぶん、決断は速く見えますが、相手の気持ちや立場が置き去りになりやすく、受け手は委縮したり反発したりします。
『I'm OK, You're not OK』の構えとして整理すると、関係が消耗しやすい理由まで見えてきます。

日常では、忙しい場面や焦りが強い場面ほど、この言い方に寄りやすいものです。
言い返す余裕がない相手ほど沈黙しやすく、その沈黙がさらに強い押しつけを招く、という悪循環も起こります。
はっきり伝えること自体は悪くありません。
問題は、相手の断る権利まで消してしまう点にあるのです。

アサーティブタイプ:自他を両立させる人

アサーティブタイプは、自分の意見も相手の意見も尊重しながら、合意点を一緒に探す自己表現です。
『I'm OK, You're OK』の構えを取り、自分にも相手にも主張する権利があると考えるため、対立しても勝ち負けに直結しません。
アサーションは訓練で身につける技法、アサーティブはその状態という整理にしておくと、言葉だけでなく態度まで含めて理解できます。

ここでのポイントは、強く言わないことではなく、事実と気持ちを分けて率直に伝えることです。
たとえば面談の場で「あなたは攻撃的ですね」と断定するより、3タイプの表を見せて自分で当てはめてもらうと、相手は防御より気づきに向きやすくなります。
読者自身も、まずは言えない場面と言いすぎる場面を書き分けてみてください。
そこから始めるのがおすすめです。

アサーティブを支える4つの柱|誠実・率直・対等・自己責任

アサーティブの土台になるのは、話し方のテクニックではなく、相手と自分をどう扱うかという姿勢です。
誠実、率直、対等、自己責任の4つがそろうと、言葉は押しつけでも遠慮でもなく、相手に届く形へ整っていきます。
逆にどれかが崩れると、同じ「はっきり伝える」でも不自然さや圧が出やすくなります。

誠実と率直:自分の気持ちにフタをしない

誠実とは、まず自分の気持ちをごまかさないことです。
本当は引き受けたくないのに「大丈夫です」と言ってしまうと、相手には優しさのように見えても、自分の本音を置き去りにしています。
率直さは、その本音をあいまいにせず言葉にする力です。
ただし、率直であれば何を言ってもよいわけではありません。
遠回しすぎて伝わらない沈黙も、思ったことをそのままぶつける言い方も、どちらも誠実とは言いにくいのです。

アサーティブでない伝え方は、しばしばここで分かれます。
非主張的な人は気持ちを飲み込みやすく、攻撃的な人は気持ちをそのまま押し出しやすい。
筆者も以前、「率直に言ったつもり」が、相手にはきつい言い方として受け取られたことがありました。
振り返ると、足りなかったのは率直さではなく対等さでした。
気持ちを隠さないことと、相手を傷つけてよいことは別です。

対等:上下ではなく横の関係で話す

対等とは、相手を見下さず、卑屈にもならず、人として同じ重みを持つ相手として話すことです。
立場が上でも下でも、「命令する側」「従う側」に固定すると、言葉はすぐに硬くなります。
逆に、必要以上にへりくだると、伝える内容まで弱くなってしまうでしょう。
アサーティブは、上下の力関係ではなく横の関係を前提にするからこそ、落ち着いた明確さを保てます。

ここが抜けると、率直さは刃になります。
筆者が「はっきり言えば通じるはず」と思っていた時期は、実際には相手を追い詰める言い方になっていました。
攻撃的タイプは「I'm OK, You're not OK」の構えで相手を後回しにし、非主張的タイプは「I'm not OK, You're OK」の構えで自分を下げがちです。
アサーティブは「I'm OK, You're OK」です。
自分も相手も同時に尊重するから、同じ意見でも圧が変わります。
### 自己責任:言わなかった結果も引き受ける

自己責任とは、言ったことだけでなく、言わなかったことの結果も自分の選択として引き受ける考え方です。
「言わなかったから察してほしかった」「伝えなかったのに誤解された」と相手を責めるより、伝える機会を選ばなかった自分の判断を見直すほうが、実はずっと楽になります。
自分の責任として捉え直すと、他人の反応に振り回されにくくなり、次に何を伝えるかを主体的に決めやすくなるからです。

この柱があると、非主張的な沈黙も、攻撃的な責め口調も、どちらも減っていきます。
アサーティブな人は、誤解を招いた場面でも「言わなかった自分」に目を向け、必要なら言い直すでしょう。
4つの柱は別々の美徳ではなく、態度の土台です。
誠実であっても対等さがなければ刺さるだけになり、自己責任がなければ相手任せの期待に戻ってしまう。
自分はどこでつまずきやすいか、まずそこを見分けてみてください。

アサーティブの心理学的な仕組み|なぜ関係が良くなるのか

アサーティブの心理学的な仕組みは、「自分も相手もOK」とみなす態度が対話の土台になるところにあります。
非主張的、攻撃的、アサーティブの3タイプは、単なる話し方の違いではなく、自他をどう扱うかという認知の違いとして整理すると見えやすいでしょう。
ここを押さえると、なぜ関係がこじれるのか、そしてなぜアサーティブだと話し合いが前に進みやすいのかがはっきりします。

我慢と攻撃が人間関係をこじらせる仕組み

非主張的タイプは、自分の気持ちを後回しにして相手を優先しやすく、内心では「I'm not OK, You're OK」の構えになりやすいです。
表面上は波風を立てませんが、言いたいことを飲み込むほど不満や怒りがたまり、対人ストレスや自己肯定感の低下につながりやすくなります。
受け身のコミュニケーションがメンタル不調に結びつきやすいと言われるのは、感情が消えるのではなく、行き場を失って蓄積していくからです。

攻撃的タイプは、逆に自分を通して相手を後回しにしやすく、「I'm OK, You're not OK」の構えになります。
主張そのものは強いのに、相手の立場を切り捨ててしまうため、防衛反応を引き出しやすく、会話が説得ではなく押し合いになっていきます。
人間関係がこじれるときは、内容の正しさよりも、この自他への態度が火種になっていることが少なくありません。

筆者が現場で見てきたのは、断れずに残業を抱え込んでいた人ほど、数か月後に体調を崩しやすいという流れでした。
本人は周囲に合わせているつもりでも、内側では疲労と不満が積み上がっていくためです。
自分の傾向を見分ける視点は単純で、頼まれごとに「つい引き受ける」のか、「つい強く押し返す」のか、あるいは「言い方を工夫しながら調整できる」のかを振り返ってみてください。
そこにタイプの差が出ます。

アサーティブは『合意点』を一緒に探す対話

アサーティブタイプは、自分も相手も尊重する「I'm OK, You're OK」の構えです。
ここでの対話は、どちらかが勝つか負けるかではなく、違いを前提にしながら合意点を一緒に探すプロセスになります。
だから相手も必要以上に身構えにくく、結果として双方の納得とストレス低減につながりやすいのです。
国内の調査でも、アサーティブタイプは対人ストレスが小さい傾向が報告されています(関口ら, 2011)。

現場でも、「正論なのに通らない」と悩む人が、勝ち負けではなく合意点探しに切り替えた途端、会議が前に進むことがあります。
相手を説得するのではなく、相手が受け入れやすい条件を一緒に探すと、反発のエネルギーが減るからです。
主張の中身は同じでも、相手の面子や不安を傷つけない設計に変わるだけで、会話の温度は驚くほど変わります。
おすすめです。

見分けるときは、「言いたいことを言えたか」だけで判断しないことがポイントです。
相手の意見を聞いたうえで、自分の希望もきちんと置けているか、折り合いの付け方を一緒に考えられているかを見てみましょう。
自分だけが我慢していないか、相手だけをねじ伏せていないか、その中間に立てているかが、アサーティブかどうかの手がかりになります。

言葉だけでなく『考え方』を整えるアプローチ

アサーションは、単に上手な言い回しを覚える技術ではありません。
自分には主張する権利があり、相手にもあるという認知を整える点に意味があります。
言葉づかいだけを変えても、心の中で「言ってはいけない」「相手が優先」と思っていれば、態度はすぐに元に戻ってしまうからです。
行動の訓練から始まり、その後に考え方を整えるアプローチを取り込んで発展してきたのは、この認知の部分が対話の土台だからでしょう。

歴史的な流れを見ても、アサーションはふるまいの練習だけで完結するものではありませんでした。
どんな場面で主張してよいのか、どこまで譲れないのかを自分の中で整理することが、実際の対話を支えるようになります。
言い方のテンプレートを覚えるより先に、「私は主張してよい」「相手も主張してよい」と考え直すほうが、長く使える変化になるはずです。
まずは日常の小さな場面で、言葉と同時に考え方も整えてみてください。

DESC法|アサーティブに伝える4ステップ

DESC法は、Describe・Explain・Specify・Chooseの4ステップで伝え方を組み立てる、アサーティブ実践の代表的なフレームです。
感情をそのままぶつけるのではなく、事実、気持ち、提案、反応後の選択へと順番に整えることで、会話の筋道が見えやすくなります。
非主張的、攻撃的、アサーティブの3タイプを見分ける手がかりにもなり、自分がどこでつまずきやすいかを確かめやすいのも利点でしょう。
筆者自身、初めてDESC法を使ったときはDで事実だけを切り出すのが難しく、つい「いつも」「絶対」と盛ってしまいました。
そこで、話す前に一度書き出すようにしたところ、余計な感情語が削れ、伝えたい核が見えやすくなったのです。

D・E:事実と気持ちを分けて伝える

Dの描写では、思い込みや推測を足さず、目で確認できる事実だけを置きます。
「いつも遅い」ではなく「今週、約束の時間に2回遅れた」と言い換えるだけで、相手は反論より確認に意識を向けやすくなります。
ここで大切なのは、責める材料を集めることではありません。
相手も同意しやすい土台を先に作ることで、防衛反応を抑え、対話を前に進めることです。
Eの説明では、その事実を受けて自分がどう感じたかをIメッセージで伝えます。
「私は予定が立てにくくて困った」のように表せば、相手を悪者にせず自分の状態を共有できます。

S:相手が受け取りやすい『提案』にする

Sは、要求を押しつける場面ではなく、具体的な代替案や依頼を差し出す場面です。
ここで曖昧な不満だけを置くと、相手は何を変えればよいのか分からず、結局は平行線になりやすいからです。
たとえば、開始時刻を早める、連絡を入れる、頻度を調整するなど、相手が動き方を想像できる形にすると、提案は受け取りやすくなります。
研修でDESC法のテンプレートを配ったときも、口頭では言えなかった依頼を受講者がすっと口にできました。
言いたいことが消えたのではなく、言う順番が見えたことで、勇気が形になったのです。

C:Yes/Noどちらにも備える選択肢を用意する

Cの選択は、相手がYesでもNoでも、その後をどう進めるかをあらかじめ想定しておく段階です。
アサーティブな伝え方は、相手をその場で従わせる技法ではありません。
合意できれば次の行動へ進み、難しければ別案を選ぶ、その切り替えまで含めて設計するところに特徴があります。
ここで見えてくるのが3タイプの差です。
非主張的タイプは自分の気持ちを飲み込みやすく、相手を優先しすぎて「I'm not OK, You're OK」に傾きます。
攻撃的タイプは自分を通す力は強いものの、相手を後回しにしやすく「I'm OK, You're not OK」になりやすいでしょう。
アサーティブタイプは自他双方を尊重する「I'm OK, You're OK」の構えで、すれ違いが起きても関係を壊さず修正を試みます。
見分ける視点は、言いたいことを飲み込んだ後に疲れが残るか、押し通した後に相手の反発が残るか、それとも両方の納得点を探せているかです。
DとEを混ぜないことも忘れないでください。
事実と気持ちが絡むと、主観の押しつけに聞こえやすく、せっかくの提案も通りにくくなります。

場面別の実践例|断る・依頼する・反論する

DESC法は、断る・依頼する・反論するという三つの場面で同じ骨組みを使えるのが強みです。
事実を先に置き、気持ちを添え、代替案や対案を出す流れにすると、相手を責めずに意思を通しやすくなります。
会話の主語を「あなたは」に寄せず、「私は」に言い換えるだけでも、場の空気は変わりやすいものです。

急な依頼を角を立てずに断る

上司から急ぎの仕事を振られたとき、ただ「すみません、無理です」と返すだけでは、相手には事情が見えません。
そこで役立つのがDESCです。
Dで事実を述べ、Eで引き受けたい気持ちを伝え、Sで代替案を出し、Cで相手の反応に合わせて調整する。
たとえば「今日は別件の締切が3件あります。
お役に立ちたい気持ちはあります。
明日の午前なら対応できますが、いかがでしょう」と言えば、断っているのに関係は崩れにくいのです。
筆者も、かつてはこの一言しか出せずに気まずさを抱えましたが、代替案を添えるようにしてからは、断っても空気が悪くなりにくくなりました。

協力をお願いする・反論を伝える

同僚に協力を頼む場面では、命令口調でも、遠慮しすぎた懇願でも動きにくいです。
Beforeでは「忙しいなら無理にとは言わないけれど、できたら手伝ってもらえないかな」と曖昧になりがちですが、Afterでは「今日の資料だけ、最終確認を15分だけ見てもらえると助かります。
締切が重なっていて、見落としを減らしたいです。
終わったらこちらで共有版を整えます」と、事実・気持ち・提案をセットにできます。
言いにくい反論も同じで、「その案に賛成できる部分はあります。
ただ、現場の負担が増える懸念があります。
実施範囲を先に絞る案も検討したいです」と分けて伝えると、相手の意見を折らずに対等の柱を保てます。

Iメッセージで主語を『私』にする

Youメッセージは、内容が正しくても相手の防衛反応を呼びやすいです。
「あなたはいつも遅い」「あなたの案は現実的ではない」と言われると、相手は内容より先に反発を覚えます。
これを「私は進行に不安を感じます」「私はこの条件だと少し進めにくいです」と言い換えるだけで、責める印象が弱まり、会話が続きやすくなるのです。
面談の場で同じ指摘をIメッセージに直しただけで、相手の表情がふっと和らいだ場面もあります。
相手を裁く言い方より、自分の受け止め方として示すほうが、話し合いの土台を保ちやすいでしょう。
さらに、DESCの各段階にIメッセージを混ぜると、事実は崩さずに温度だけ下げられます。
おすすめです。

アサーティブを身につけるトレーニングと注意点

アサーティブは、知識を入れた翌日に身につくものではなく、練習で少しずつ育つスキルです。
行動療法や認知行動療法の中で社会的スキル訓練として体系化されてきた流れを踏まえると、訓練可能な対人技術として捉えるほうが自然でしょう。
まずは自分の反応傾向を見分け、小さな場面で試しながら、少しずつ言い方の幅を広げていくのが。

低リスクな場面から段階的に練習する

非主張的タイプは、気持ちを飲み込みやすく、相手を優先しすぎて「I'm not OK, You're OK」の構えに寄りがちです。
攻撃的タイプは逆に、自分を通すことを優先して「I'm OK, You're not OK」の形になりやすく、アサーティブタイプは「I'm OK, You're OK」として自分も相手も尊重します。
どの型かは、言いたいことを我慢してあとで疲れ切るか、通したい気持ちが強すぎて関係を壊しやすいか、あるいは断られても相手を責めずにやり取りできるかで見えやすいでしょう。

練習は、言いやすい相手や低リスクな場面から始めるのが定石です。
いきなり苦手な上司に言うより、カフェで注文を言い直す、店員さんに軽い依頼をする、家族に小さなお願いを伝えるほうが、失敗してもダメージが小さく済みます。
筆者もまずはカフェで注文を言い直すところから始め、成功体験を積んでから職場に持ち込みました。
書き出しやロールプレイを使って、頭の中で考えるだけでなく声に出してみてください。

アサーティブは『わがまま』ではない

アサーティブは、自分の権利を主張しつつ、相手にも断る権利があると認める姿勢です。
ここを外すと、提案が通らなかったときに相手を責める形へ傾きやすく、アグレッシブに転びます。
わがままや自己中心とは違い、要求が通ること自体よりも、互いの立場を保ったまま伝え合えることに価値があるのです。

型を覚えたての頃、家族にDESCをそのまま使って「マニュアルみたい」と言われたことがあります。
内容は正しくても、温度感が合わなければ会話は硬くなる。
だからこそ、事実、気持ち、提案を押し通すのではなく、相手の受け取り方に合わせて少しやわらかくする調整が必要です。
非主張的、攻撃的、アサーティブの違いを見分ける視点は、自分がどこで相手を置き去りにしやすいかを知るところから始まります。

関係性・文化に合わせて使い分ける

アサーティブは万能の型ではなく、関係性や場面に応じて調整して使うものです。
日本の職場では、率直さをそのまま出すより、言い回しに少し柔らかさを足したほうが通りやすいことがあります。
型を機械的に当てはめるのではなく、相手との距離やその場の空気を見て加減する力も、アサーティブの一部です。

見分ける視点としては、発言の中身だけでなく、相手の反応が「防御的になる」「圧を感じる」「安心して返答できる」のどれに近いかを見ると整理しやすいでしょう。
自分のタイプを知り、低リスクな場面で練習し、断る権利も認めながら、関係に合わせて柔らかさを足す。
ここまでできると、アサーティブはただの言い方ではなく、使い分けの技術になります。

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小野寺 美咲

心理学科卒。企業の人事・組織開発部門で産業心理学を実務に応用してきた経験から、認知バイアスやコミュニケーション心理学など「日常で使える心理学」を伝えます。

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